草木染めと石窯パンのある暮らし
~山里で続ける食と暮らしの活動~
.jpg)
現在の活動
豊田市稲武地区の集落で、草木染めや焼き菓子、パン作りを行っている村田牧子さん。
現在は草木染めと焼き菓子・パンの製造を中心に活動している。
焼き菓子やパンは販売も行い、イベントへの出店や店舗での取り扱いもある。
また、パン作りや食に関する講習会や地域での体験の場づくりの開催にも力を入れているという。
.jpg)
地域の施設にある石窯を活用した活動も続けている。
「豊田市の施設に大きな石窯があるんですが、ほとんど使われていなかったんです。もったいないので、友人と石窯の会を始めました」
石窯でピザやパンを焼き、かまどでスープを作る会である。
石窯で食べ物を作り、参加者と一緒に食べる時間は、都会に住む人たちと山里に住む人たちの交流の場にもなっている。
また、春と秋には野草を採って料理する「草を採り草を食べ草の話を聞く会」も開催している。
植物に詳しい講師とともに草を採り、それを料理にして味わう会である。
「草を採って、それで草ピザや草スープを作って、みんなで食べながら話を聞くんです」
自然の中で食材を見つけ、調理し、味わう体験を通して、自然に親しむ機会をつくっている。
愛知から京都へ
村田さんは愛知県で育った。大学進学を機に、京都へ移り住むことになる。
「とにかく愛知県を出たかったんですね。でも、東京はちょっと遠いので、手近なところで京都の大学に進学しました」
大学では文学を学び、一人暮らしを始めた京都での生活がその後の仕事の基盤となった。
編集者としての経験と食への関心
大学卒業後、村田さんは京都の出版社に勤めた。
その後、編集の仕事を探している中で、自然食やマクロビオティックに関わる雑誌の編集部に入ることになる。
「マクロビを学ぼうと思って入ったわけではなくて、編集の仕事を探していたら、たまたまそこだったんです」
偶然の出会いではあったが、この経験が食への関心を深める大きなきっかけとなった。
.jpg)
「食べるもので人の体がこんなに変わるのかと驚きました」
食生活を変えることで自らも体調の変化を感じ、食べ物と体の関係に興味を持つようになったという。
「このときの経験が、現在の焼き菓子やパン作りに深くかかわっています。添加物はもちろん使用せず、粉も副材料もほぼ有機・無農薬栽培の食材を使っています。乳製品や卵を使わない焼き菓子も、アンティマキを立ち上げた初期のころから作っています」
マクロビの雑誌の編集部を離れた後は、フリーの編集者、ライターとして活動を始める。
仕事のきっかけをつくるために、自主制作の冊子を作った。
一般女性から投稿を募り、文章を編集して構成した雑誌は新聞でも紹介され、それをきっかけに仕事が広がった。
「バブル崩壊の少し前、豊かな時代にはなっていても、社会における女性たちの地位はまだ不安定。かといって上の世代をサンプルにして生きることはできず、ままならない日々の気分をつづったつぶやきのような声を集めました」
ラジオ番組の構成にも関わり、女性の暮らしや考えをテーマにした番組づくりも行った。
「当時は、JKではなくて女子学生が元気な時代でした。彼女たちの興味の核みたいなものを引き出すコーナーを設け、あの頃の若い世代の明るさと暗さがにじみ出てきたら面白いなと思って、番組作りをしていました」
山里への移住
京都で暮らす中で、村田さんの心に残っていたのは、幼い頃に過ごした愛知県の山里の記憶だった。
.jpg)
「父が公務員で、県内の転勤が多くて“ふるさと”はないんですが、幼い頃に暮らした設楽町の風景だけは懐かしく思い出していました。マクロビの雑誌に携わっていたころ、有機農業や田舎暮らしに興味を持ち始め、いつか田舎に住みたいとだんだん思うようになりました」
田舎で暮らしたいという思いを愛知に住む両親に話したところ、父親が関心を示した。
「母は不本意だったようですが、父が思いのほか乗り気になって、積極的に移住先を探しはじめました」
父親の退職後、両親は田舎暮らしを始めた。村田さん自身は京都で仕事を続けながら、この地と京都を行き来する生活を送るようになった。
その後、2003年に移住を断行。晴れて田舎暮らしが始まった。
移住後の出来事
移住後の暮らしは、必ずしも順調なことばかりではなかった。
田舎での生活は、都会の暮らしでは想像できない事が起こり、一時は逃げ出したいと思うほどの経験をした。
しかし、そうした経験を通して地域の外にも多くの知り合いができ、活動の広がりにつながった。
その後、焼き菓子やパン作りを本格的に始め、イベントへの出店や講習会などの活動も少しずつ増えていった。
街の人々との交流を通じて、活動は徐々に広がっていった。

今後の展望
これまでの活動を振り返りながら、村田さんは次のように語る。
「長期計画があったわけではないのです。面白いと思うことに出会ったら、その時その時ただやってきただけなのです。たとえば、草の会は、ほったらかしにしてあった畑が草だらけになり、どうにもならなくなったとき、たまたま草の専門家と出会い、草と親しむ会を開きたくなりました。春と秋、年に二回ずつ開き、それがもう今年で10年近くになりました」
今後も、無理に広げるのではなく、自然な形で続けていきたいと考えているという。
また、移住を考えている人に向けて、村田さんは次のように話す。
「田舎暮らしには良いことも大変なこともあります。近隣との協調が期待されると思いますが、意に染まないことを苦しんでまでする必要はない。孤立を恐れず、自分が、田舎でしたいと思っていることを最優先して暮らしてほしい。いつかきっと理解者は現れると思います。そして、田舎暮らしで何より代え難いなと思うのは、土や草、木々が身近にあることの安心感です。その安心感をうんと味わってほしい」
人が集まり、食べ、語り合う時間を大切にしながら、山里での活動はこれからもゆっくりと続いていく。

*****************************
インタビュー・執筆:佐治 真紀 撮影:中島かおる
アンティマキ(村田牧子)
Instagram :https://www.instagram.com/auntie_maki/
blog : nihonkamoshika78のブログ「アンティマキのいい加減田舎暮らし」
facebook:村田牧子


